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2021年江戸川乱歩賞・日本推理作家協会賞の贈呈式、一般公開へ参りました!

「人類よ、フロンティアスピリットをいだけ」でお馴染みの奏花です。
昨今の使ってみたい言葉ランキングは「素人質問で恐縮ですが」が他の追随を許しません。



さて。
2021年11月01日月曜日――月始まり・週始まりを憂うことなかれ。
江戸川乱歩賞・日本推理作家協会賞の贈呈式一般公開が開催されました。
1947年、日本推理作家協会の前身である日本探偵作家クラブ設立以来、初の試みです。

一般公開の抽選については外れることを前提に申し込んだため、どのようなものだったか、フォームに情報を記入したことが辛うじて記憶にある程度。
したがって、これ以上は割愛します。



会場は収容人数1000名を超える豊島区芸術劇場。
15時30分入場、15時25分ころに到着。わたしの前には列を折り返しながら、50名はすでに並んでいました。
同じ目的のために同じ時間を共にする人々ーー誰ひとりとして存じ上げませんでしたが、苦手な人衆など瑣末なこと、腕時計を何度も確認しつつ当選の封筒を両手で弄びながら心躍らせておりました。

入場とともに受付を済ませてコロナ対策の自席報告書の記入を完了。わたしは一階席の下手側後方だったので、会場内を見渡しやすかったです。
しばらく一般公開に参加する方々がひとつ飛ばしで席についていく様子を眺めていました。
年齢層は高いだろうとある程度の場違い感は覚悟していたものの、実際、想像よりも年齢はばらけているように見受けられました。
数名ほど同年代だろう方々を見つけたので安心&嬉しかったです。

開幕するまでは、
客席側の方をピックアップして髪型、服装、持ち物を含めた情報から年齢や職業の予想……とか。
最後方中央(わたしの席グループ右側のスペース)のカメラは広報されていたYouTube用だろうカメラはどれくらいの画質で舞台を捉えるのかな……とか。
中央前方へ向かう夫妻に連れられた幼い子どもたちを見かけて桃野雑派氏の受賞の挨拶にも登場した甥御さん姪御さん両名だろうか……とか。
落ち着くために、とりあえず、思考を巡らせて。ただ、時が来るのを待っておりました。
オーディエンス側でわたしを差し置いて落ち着きがなかった人間はいなかったでしょう。

開幕までのお話はこのあたりまでにするとして。



〈2021年江戸川乱歩賞は2作同時受賞〉

伏尾美紀『北緯43度のコールドケース』(『センパーファイ──常に忠誠を──』を改題)

桃野雑派『老虎残夢』

〈2021年日本推理作家協会賞は3部門計4作受賞〉

 長編および連作短編集部門
坂上泉『インビジブル』

櫻田智也『蝉かえる』

 短編部門
結城真一郎『#拡散希望』

 評論・研究部門
真田啓介『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみ(「Ⅰフェアプレイの文学」「Ⅱ悪人たちの肖像」)』



上記6作について、それぞれの内容の詳細は以降のレポートでまとめるものとします。

今回は、何よりも、まずは、2021年江戸川乱歩賞・日本推理作家協会賞の贈呈式の感嘆を語りたい。語らせて欲しいのです。
学校の課題を済ませ、前日から十分な休息をとり、(迷子にはなりましたが)忘れ物も無し……心置きなく大変楽しみましたもので☆





開幕は、協会から京極夏彦氏、貫井徳郎氏、柚月裕子氏、後援・協力団体の責任者、そして各賞受賞者らの入場からでした。
京極氏の挨拶から貫井氏・柚月氏の忌憚ない丁寧な講評報告、賞・協会や江戸川乱歩邸についての動画、受賞者方による受賞の言葉、写真撮影がありました。
京極氏制作の江戸川乱歩賞・日本推理作家協会賞についての解説動画について、当方は無知なので大変勉強になりました。ご自身で映像や音声を編集していらっしゃることには脱帽です。
丸山ゴンザレス氏、佐藤究氏両名による江戸川乱歩邸訪問の映像は、なんだか芸人さんのやりとりかバラエティ番組の一節を見ているような面白さがありました。蔵書の几帳面な管理には江戸川乱歩氏の面影が滲んでいるように見えました。(後のトークイベントで辻村深月氏が同様の内容を言及されたので静かに高揚しました♪)

贈呈については以下のとおり。

江戸川乱歩賞の贈呈(貫井氏の講評報告、伏尾氏、桃野氏)
日本推理作家協会賞の贈呈(柚月氏の講評報告、坂上氏→櫻田氏(代理として編集者さん)、結城氏、真田氏)

各受賞者方、京極氏から正賞・副賞をお受け取りになりました。
講評や受賞者らの受賞の言葉については、公式サイトで閲覧できるので割愛します。気になる方はご検索くださいませ。

その後、写真撮影を完了して閉幕しました。
京極氏の「小説は不要不急なものであるが、不要不急なものがなければ決して豊かな人生を送ることはできない」と力強いお言葉。
言葉を扱う小説家を長く続けていらっしゃるからこそ、広く影響を与え得るだろう重みを感じました。
佐野洋『推理日記』に類似する内容を探しながらぼんやりしているうちに、贈呈式は閉幕。
休憩時間になりました。
司会の方が会場近くに江戸川乱歩賞正賞の江戸川乱歩像やあれやこれが展示されていると、お知らせされましたが。
当方は天性の迷子なので、観覧は遠慮しました。
おとなしく自席で頂いた冊子に目を通していると……ーーすぐ前方にて。出版社の方々だろうか。ひとりが伏尾氏、桃野氏をもうひとりに紹介しているようなシーンを目撃。遠目に、桃野氏は細身だが身長は平均ほどだろうか? 伏尾氏はもしかしたら155あるかどうかの体格なのでは?
……お話の内容は聞き取れなかったため、好きなように考えておりました。


間もなく。トークイベントに突入。
京極氏、辻村深月氏、綾辻行人氏(リモート参加)、貫井氏の4名と司会として出版社の方が舞台上へ。

そーうですね。まさに終始穏やか。
辻村氏が明かした「先輩が後輩をずっと見守っていく」協会の慣習は上品ですし、気難しさよりも諧謔を有する方々だと感じました。

殊に、それぞれの先生方が印象に残っている選考のお話を特に楽しく聞かせていただきました。
貫井氏の、出版社からの電話で最終候補に残ったこと、数日後に選考会であることを伝えられたにも関わらず、翌日に「選考会しました! 落ちました!」と連絡を受けたというお話。当事者からするとたまったものでは無いように思えましたが、貫井氏の語り口に笑いを誘われました。
辻村先生の、46年ぶりの該当作品無しを決めた選考会について。
薬丸岳氏によって小さく千切った手持ちの紙に書かれた意見が集められて多数決――と。学級会みたいな決め方だったが薬丸氏が大真面目に提案なさったからこそ、信じて「該当作品無し」に投票できたとお話になりました。勇気ある決断ができたのは、小説家のプライドを持っていたことも要因だったのかなと想像。
協会設立60周年記念の選考会にて。
冷静に困ってしまわれる綾辻氏、その様子をしっかり映像に残す京極氏。仲が大変よろしいようで、失礼に当たるかもしれませんが、可愛らしさに笑みがこぼれました。綾辻氏が困惑された理由が「唯一自分だけ推されている当該作品の面白さがわからなかったから」というのも素敵ポイント。
また、推薦する作品のために武力行使も厭わないとジョークをおっしゃる先生や江戸川乱歩邸に自著を忍ばせるのは果たして犯罪だろうかと熟慮する先生、いつしかの前任理事として受賞者に発破を執拗にかける先生と歴代受賞者らのやりとりーー閉鎖的な協会のため今まで外からは実情が掴めずにいましたが、大御所然とした格式張っている印象を改めました。


日本の推理小説の発展と江戸川乱歩賞・日本推理作家協会賞の密接な関係。

貫井氏が大学生のころ、江戸川乱歩賞に挑戦したこと。

綾辻先生が講談社に原稿を持ち込んだことで日本における新本格ムーブメントが発生したこと。

それが京極先生の原稿持ち込みに繋がり、メフィスト賞設立、辻村深月さんの受賞や現在の日本推理小説の発展に繋がったこと。

そして。
選考委員は、己の小説家としての矜持にかけて全身全霊で受賞作を選定すること。



いずれの話も、作家志望に大きな動機・勇気を与えるものでしょう。

わたしも公募に挑戦してみようかな、徹底した本格ミステリ書いてみようかな……と、ぼんやり未来を思い描こうとしたものの、ひとまず、その前に多重責務連載をある程度は解消しなければならないことに気がつきました。
未来への期待とは打って変わって、小説責務を5年後にはどうにかできないものかと思考――……Web小説で満足しているわたしでさえ、そのように思ったのですから、リアルタイムで拝聴していた公募通過を望むあまたの原石はどれほど昂りを抱えたのか計り知れません。
気が早いですが、来年度発表の受賞作品が今から待ち遠しいです。



もう少し時間をおいて内容を解釈したく思いましたが、その内容に関する記憶が薄れてしまったり熱量が欠けてしまうのは避けたい。
不要不急ならぬ必要緊急で綴りました次第。
現場からは以上です。

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