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【推理小説の2大原則!】ノックスの10戒・ヴァンダインの20則って?

目次

はじめに

ノックスの10戒 ヴァンダインの20則

ミステリーの原則として有名なものは、この2つ。
それぞれ推理小説における黄金時代(およそ1930年代前後)に活躍した、ロナルド・ノックス(1888~1957)、ヴァン・ダイン(1888~1939)によって提唱された原則です。

名前は知っているけれど詳細は知らない方々に向けて、内容とともに解説していきます!


ノックスの10戒について

1929年1月上梓された『The Best of Detective Stories of the Year 1928』(邦訳:『探偵小説十戒』)の序文にて、提唱した。

内容は、以下のとおり。

1 犯人は物語の始めのほうで登場している人物でなければならない。
2 探偵方法に超自然の能力を用いてはいけない。
3 犯行現場に秘密の抜け穴や通路を使ってはいけない。
4 未発見の毒薬や難しい科学上の説明を要する装置を犯行に使ってはならない。
5 中国人を登場させてはいけない。☆
6 偶然や第六感で探偵は事件を解決してはいけない。
7 探偵自身が犯人であってはいけない。但し犯人が探偵に変装して、作中の登場人物を騙す場合はよい。
8 探偵は読者に提出しない手がかりで解決してはいけない。
9 探偵助手役(物語の記述者)は自分の判断を全て読者に知らせなければならない。
10 双生児や一人二役の変装は、あらかじめ読者に知らせておかねばならない。

作者は、謎解きに必要な情報を真相解明までにすべて開示する
犯人は、存在を明記されている人物にする
犯行は、現実的な方法にする
探偵役は、捜査に用いるのは自身の能力だけにする
     (偶然・第六感・超能力は忌避すべき)

5 中国人を登場させてはいけない。  について。
 当時、人知を超える能力を行使できると思われている節があったため。



ヴァンダインの20則について

1928年に上梓された『American Magazine』9月号にて提唱した。

内容は、以下のとおり。

1 事件の謎を解く手がかりは、全て明白に記述されていなくてはならない。
2 作中の人物が仕掛けるトリック以外に、作者が読者をペテンにかけるような記述をしてはいけない。
3 不必要なラブロマンスを付け加えて知的な物語の展開を混乱させてはいけない。
  ミステリーの課題は、あくまで犯人を正義の庭に引き出す事であり、恋に悩む男女を結婚の祭壇に導くことではない。
4 探偵自身、あるいは捜査員の一人が突然犯人に急変してはいけない。これは恥知らずのペテンである。
5 論理的な推理によって犯人を決定しなければならない。偶然や暗合、動機のない自供によって事件を解決してはいけない。
6 探偵小説には、必ず探偵役が登場して、その人物の捜査と一貫した推理によって事件を解決しなければならない。
7 長編小説には死体が絶対に必要である。殺人より軽い犯罪では読者の興味を持続できない。
8 占いとか心霊術、読心術などで犯罪の真相を告げてはならない。
9探偵役は一人が望ましい。ひとつの事件に複数の探偵が協力し合って解決するのは推理の脈絡を分断するばかりでなく、読者に対して公平を欠く。それはまるで読者をリレーチームと競争させるようなものである。
10 犯人は物語の中で重要な役を演ずる人物でなくてはならない。最後の章でひょっこり登場した人物に罪を着せるのは。その作者の無能を告白するようなものである。
11 端役の使用人等を犯人にするのは安易な解決策である。その程度の人物が犯す犯罪ならわざわざ本に書くほどの事はない。
12 いくつ殺人事件があっても、真の犯人は一人でなければならない。但し端役の共犯者がいてもよい。
13 冒険小説やスパイ小説なら構わないが、探偵小説では秘密結社やマフィアなどの組織に属する人物を犯人にしてはいけない。彼らは非合法な組織の保護を受けられるのでアンフェアである。
14 殺人の方法と、それを探偵する手段は合理的で、しかも科学的であること。空想科学的であってはいけない。例えば毒殺の場合なら、未知の毒物を使ってはいけない。
15 事件の真相を説く手がかりは、最後の章で探偵が犯人を指摘する前に、作者がスポーツマンシップと誠実さをもって、全て読者に提示しておかなければならない。
16 よけいな情景描写や、わき道にそれた文学的な饒舌は省くべきである。
17 プロの犯罪者を犯人にするのは避けること。それらは警察が日ごろ取り扱う仕事である。真に魅力ある犯罪はアマチュアによって行われる。
18 事件の結末を事故死とか自殺で片付けてはいけない。こんな竜頭蛇尾は読者をペテンにかけるものだ。
19 犯罪の動機は個人的なものがよい。国際的な陰謀とか政治的な動機はスパイ小説に属する。
20 自尊心(プライド)のある作家なら、次のような手法は避けるべきである。これらは既に使い古された陳腐なものである。
 A 犯行現場に残されたタバコの吸殻と、容疑者が吸っているタバコを比べて犯人を決める方法
 B インチキな降霊術で犯人を脅して自供させる
 C 指紋の偽造トリック
 D 替え玉によるアリバイ工作
 E 番犬が吠えなかったので犯人はその犬に馴染みのあるものだったとわかる
 F 双子の替え玉トリック
 G 皮下注射や即死する毒薬の使用
 H 警官が踏み込んだ後での密室殺人(=早業殺人)
 J 土壇場で探偵があっさり暗号を解読して、事件の謎を解く方法

謎解きに必要な情報を真相解明までにすべて明白に開示する
犯人が仕掛けたトリック以外、作者は読者を騙さない
 (事件の真相を事故死・自殺で片付ける、
  捜査陣から急に犯人を登場させるetc.)
過剰なLOVE・言葉遊び・文学的価値は不要
探偵役は、読者と対等な条件で真相にたどり着くようにする
探偵役は、一貫した捜査から論理的・合理的な推理によって事件を解決する
長編作品には殺人事件が必要
犯人は、存在を明記された重要な一般人にする
犯行は、現実的な方法にする
プライドがあるなら、作品の根幹を成す謎・トリックは精巧に創り上げる



比較すると……

ノックスの10戒、ヴァンダインの20則は、それぞれ上記の内容です。
同じ時期に提唱された二つの原則を比較して、
イギリスとアメリカの同じ時代に生きた巨匠らが何を重視していたのか確認します!

共通点
 謎解きに必要な情報を真相解明までに漏れなく開示する
 犯人は、存在を明記されている人物にする
 犯行は、現実的な方法にする
 事件は、探偵役の論理的な推理によって解決される

相違点
 犯人が仕掛けたトリック以外、作者は読者を騙さない
 過剰なLOVE・言葉遊び・文学的価値は不必要
 探偵役は、読者と対等な条件で真相にたどり着くようにする
 長編作品には殺人事件(読者の興味を引く強力な方法)が必要
 プライドがあるなら、作品の根幹を成す謎・トリックは精巧に創り上げる

まとめ
ヴァンダインの20則がノックスの10戒について、ほぼ内容を包含しており内容も詳細まで記されている。
(条項が多いのだから、不思議はない。)
また、どちらも読者に対して誠実であるための内容でありフェアプレイを信条にしていた可能性がある。

文化の発展には著しいエネルギーが必要である。 推理小説の発祥はアメリカ国籍エドガーアランポーが著した『モルグ街の殺人』であり、初期の発展はイギリスを中心としたヨーロッパ諸国だった。
その熱量を同じ時代に生きたふたり―― アメリカで生まれ育ったヴァンダイン、イギリスで生まれ育ったロナルドノックス ――が受け取って、明文化したため内容が酷似したと考える。

さいごに

さて。

ノックスの10戒&ヴァンダインの20則について、共通点や相違点はご理解いただけましたか?

ふたりの巨匠それぞれ原則破りの作品を執筆していることからわかるように、あくまでもポジションは、厳守する必要はないルール――読者に対して誠実な内容であれば、問題はありません!

評価の高い作品は総じて原則が守られている印象ですが、変化球に手を伸ばしてみるのも楽しみが増えて良いですよー。

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