MysteryExhibition– category –
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揺れるシャンデリアの謎
江波戸しずくは、連日、自宅のシャンデリアで首を吊る瞬間の母の姿を夢で見ていた。繰り返される悪夢に悩みつつ、しずくは変わらず部活の朝練へ向かうため家を出てバス停へ向かう。 その途中、酷い眩暈と吐き気に襲われたしずくは瞳を閉じて体調不良が落ち着くのを待った。再び瞼を上げると、目の前には言葉を解す白猫トトがいた。トトの強引な案内に誘われたしずくはやがて意識を失い、気づいたときには不気味な空間にたどり着いた。 目の前には、悪夢と同じ光景が落としこまれている作りかけのジグソーパズルが存在している。 しずくは不気味な空間から脱出するため、トトに促されつつ、ジグソーパズルの完成を試みる。 パズルのピースをひとつずつ嵌めていくごとに少しずつ迫ってくるのは、母との記憶だった。過去の日々に苛まれながらも、しずくはパズルの完成を目指す。 -
赤い意図
ある朝、糸魚川茜は浮気を理由に口論となり夫を突き飛ばして意図せず死なせてしまう。 犯行後、友人との外出を経てから手早く証拠隠滅を完了させると、大胆不敵にも第一発見者として警察へ通報した。 菱川あいずは、親しくしていた謎解きクリエイター糸魚川拓の死を悼む。事件解決に貢献した過去の縁を活かして糸魚川の死に関して警察に探りを入れた。警察にダイイングメッセージの存在を示唆すると自らは現場である糸魚川宅へ乗りこむ。道中、菱川は、MysteryExhibition1短編部門の作品のひとつ『お掃除ロボット専属トリマーの朝は早い』に関心を抱く。3つの単語と2つの謎が提示されただけであるその文面からは友人が亡くなった事件が連想されるだけでなく、警察が公表していない情報が含まれていた。 首尾よく糸魚川の妻と面会を経た菱川は、再び警察に協力を取りつけて真相解明に取り掛かる。 -
大正浪漫系女子探偵と七支刀の殺人
天秤座高校に通う大正浪漫系女子探偵の風鈴坂紬は、難事件と聞いて自転車に曲乗りして現場へ向かった。 風鈴坂紬は現場に到着すると執事の協力を得て事件調査を進めていく。 経営者や画家などのあらゆる顔を持つ著名な立花豪氏がスキャンダル報道を苦にして自ら命を絶ってから一か月後、豪氏の弟である壮司氏が七支刀で胸を貫かれて殺害された事件である。 兄の死から間もなく傍若無人な態度を取り始めた壮司氏に対して、周囲は大きな不信感を抱いていたという。途中、三毛蘭二郎と名乗るおかしな青年の乱入もあったが、壮司氏殺害現場には倉庫から豪氏の所持品が持ち出されていることを確認したり書斎のシュレッダーから細かく裁断された豪氏のものと思われる遺書を復元させたりした。 奇妙な見立て殺人の真相にたどりついた風鈴坂紬は、関係者を集めて「さて」と言う。 -
コンパクトカー
白川奈緒美は、子宝には恵まれなかったが、夫の辰彦とともに穏やかな日々を過ごしていた。 ある昼下がり。 最近の病気を疑うほど物忘れの激しい自らの記憶違いに辟易しつつも、辰彦の誘いに乗り、自宅にてふたりで思い出深い映画を鑑賞する。 映画に見入っている最中、外から防犯ブザーの音が聞こえてきた。 突然のことに夫妻は顔を見合わせる。 一度は近所の学校に通う子どもの悪ふざけだろうと辰彦に制止されたものの、一向に鳴りやまないブザーに不安をあおられて、奈緒美は家を飛び出した。 防犯ブザーの響きに誘われるように近所の武雅野家のリビングに足を踏み入れると、武雅野家の一人娘である美園が首を絞められて殺害されていた。 警察からの聴取を経た帰路、コンパクトカーの座席に身を預けながら、奈緒美は美園殺害は辰彦の犯行ではないかと疑念を抱く。 -
朝をさがして
屋良家の人間は必ず「朝」が含まれる名前を持つ――。 7人家族の次女である十月十日は、件の命名法則を満たすために付けられた自身の奇抜な名前を快く思っておらず、命名者である父を疎んでいた。また、当該法則を満たしていながらも、比較的問題のない名前に落ち着いている兄姉や弟妹にコンプレックスを抱いていた。 そんな折、屋良家に8人目の家族が誕生する。 末妹の名前は「ふたえ」。十月十日はその名前にショックを受けた。音の響きが平凡であることもそうだが、それ以上に名前に「朝」の字が見つからないことに納得いかないのだ。 これまでの命名法則に従えば、末妹の名前にもなんらかのかたちで「朝」が含まれているはずなのだが、命名の由来を父に直接聞くのはためらわれた。 そこで十月十日は弟妹の協力を得て、「ふたえ」という名前に隠された「朝」をさがし求める。 -
二次創作
2025年4月上旬。〝探偵役と謎〟宛てにMysteryExhibition1における二次創作の扱いについて問い合わせメールが届いた。当該サイトを運営する三葭はメールを返信した。 その後、問い合わせをした人物から『二次創作』と音声データが提出された。 三葭が『二次創作』の作品ファイルを確認すると、たった数行だけが記されており、謎の提示のみなされていた。 小説とは思えず頭を悩ませた結果、三葭は送られてきた作品は題名をもとに考察して「実際の事件が一次創作、それをもとにした二次創作ではないか」と結論する。実際、作品ファイルの内容から当該事件の特定に成功した。 三葭は当該事件の記事を書いた記者を通じて、第一発見者たちの連絡先を入手する。 事件を解くことに使命感を抱いている三葭は覚悟を決めて、関係者へ連絡を入れた。 -
E-active edit
推理小説を執筆のため、AI編集者E-active editを活用してみることにした。 チャット形式でやり取りを行うものらしく、こちらの命令した内容に答えてくれるらしい。 小説の設定を打ち込み、殺人事件がどのように解決するのか考えさせていく。 事件の概要。現場の状況。容疑者。手がかり。解決させたい問題。 ひとまず、これだけ情報を与えれば十分だと思い、さっそく答えさせてみる。しかし、返された答えは、せっかくの設定をぜんぜん使われず代わりに打ち込んでいない情報が勝手に作られ使われた内容だった。 望んだ答えが返されなかったのは命令がうまく通らなかったためだと解釈し、指示を重ねる。 なかなか思いどおりの答えを返してくれないE-active editを相手に辛抱強く学習させながらどうにか小説の解決案を答えさせようと奮闘する。 -
黒雀姫
大学時代、麻雀に夢中だった私は雀荘でKと親しくなる。 ある日、Kに誘われたバーで失恋を打ち明けられた。手酷く振られて涙するKの隣で、私は以前Kから直接紹介された『黒雀姫』を思い浮かべる。やがてKから紡がれる未練の言葉は怨嗟に移り変わり、私はその場を辞した。 後日、不安を抱きながらKの誘いに乗って彼の自宅で雀荘の仲間たちとともに過ごした。 さらに数日後、私は大学終わりに待ち受けていた刑事たちから若い女性が殺された事件について元恋人であるKが容疑者として浮上したことを聞かされる。奇しくも犯行時刻にKのアリバイを証言する立場となったが、私は彼が零した怨嗟を思い出して動揺とともに思考する。 ひとりでは抱えていられず、私は事件当日をともに過ごした仲間のひとりへ、自身の推測をぶつけたーー本当にKに犯行は不可能だったのか。
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