勇者ミトと三つの宝玉

 これは、人間と魔物の永きに渡る戦いを終わりに導いた、一人の少女のお話。



 むかしむかし、ある村に、ミトという名前の女の子が住んでいました。
 ミトは、誰にでも分け隔てなく接する、元気一杯で心優しい、村一番の人気者でした。
 ミトは大人たちから、いつもこう言い聞かせられていました。
『悪い魔物に食べられてしまうから、絶対に村の外に出てはいけない』
 魔物とは、醜い姿をした化け物でありながら、人語を解し、人間を襲う恐ろしい存在――ミトはそう教えられるたびに、こう思っていました。
(でも、言葉が通じるなら、友達になることだってできるはず。いつか、いろんな魔物さんと仲良くなることができたら、とっても楽しいだろうなあ)

 それは、ミトが十歳になったばかりの頃でした。ある日、村に行商人としてやってきた男が、ミトに助けを求めました。
「森で、怪我をした人が倒れているんだ! お嬢さん、手当てをしてやってくれないか」
 森は村の外にあり、大人たちの言いつけによれば行ってはいけない場所です。けれど、困っている人を助けないわけにはいきません。ミトは迷うことなく頷きました。
 しかし、それが間違いだったのです。
 森で待っていたのは怪我人ではなく、盗賊の一味でした。ミトは、行商人のふりをした盗賊に騙され誘い出されてしまったのです。
 盗賊たちはミトをアジトに連れ込むと、嗜虐心を満たすため、ミトの身体を執拗に痛めつけました。最低限の手当てをされていたためすぐに死ぬこともなく、ミトはじっと耐えることしかできませんでした。
 すぐに村の自警団がアジトに乗り込みましたが、その時にはすでにミトの全身はボロボロで、もう助からない状態でした。
 みんな、心配かけちゃって、ごめんなさい――助けに来た人たちを見たミトは心の中でそう呟いて、そっとまぶたを閉じました。

 ミトは、村から一番近い町にある教会の大聖堂で目を覚ましました。盗賊たちに傷つけられたのが嘘のように、ミトの身体には傷一つありませんでした。それどころか、かつてないほどの活力が湧いているのを感じていました。
 教会の神官はミトにこう語りかけます。
「ミト様。人々の想いは、集まれば確かな力になります――これは比喩ではありません。今この瞬間もこの国で生き、互いの幸せを願うたくさんの人々の心が、奇跡を起こしているのです。
 実はその想いの集積が、今のあなたを支えています。深く刻まれた傷を繋げて覆い隠し、あなたの命を保っている――そして、あなたに常人では到底及ばぬ身体能力――そう、勇者・・としての力を与えているのです」
 ミトはなんと、誰にも負けないほどの力持ちになっていました。勇者の力は、人々の想いによって生じています。それを受け取るには、とても優しい心の持ち主である必要がありました。ミトはその稀有な資質を持つ者として、そして何より盗賊に傷つけられた身体を生かすために、勇者に選ばれたのでした。
「そしてミト様、あなたには使命が託されました。
 人々を救う勇者として、悪しき魔王・・を打ち滅ぼすのです」
 魔王とは、魔物を統べている存在であり、人々の恐怖の対象です。魔物たちの領域の最奥にある魔王城に住んでいると言われています。
「けれど魔王城への旅路の中で、どうしようもない困難に直面することもあるでしょう。そんな時のために、これを授けます」
 神官は三つの宝玉を取り出しました。
「この宝玉には、人々の想いが込められています。一つにつき一度だけ、願いを叶えることができるのです。
 もっとも、どんな願いでも叶えられるというわけではありません。私にも理由は分からないのですが、魔王を直接倒したり、魔王城に瞬間移動したりするような願いは叶えてくれないのです。それでもあなたの旅路において、強力な助けとなることでしょう」
 そしてミトは勇者の剣と旅の道具一式を受け取り、村や町の人々、さらには集まってきた国中の人々に見送られて出発しました。

 しかしミトは、密かに胸の内でこう思っていました。
(魔王さんを傷つけたくないなあ。なんとか魔王さんと話し合って、人間と魔物さんが一緒に暮らせるようにしたい。うん、やってみよう)

 こうして、ミトの魔王城への旅が始まりました。



 ミトの旅は順調でした。勇者としての力を宿した身体で元気一杯に駆け、魔王城にぐんぐん近づいていきます。ミトが一人で旅に出たのは、それについていける人がいないからでした。
 千里の邪眼でそれを見た魔王は、配下の四体の魔物、通称四天王――オガ、リチ、サラ、ドラに、ミトを追い返すよう命じました。

 しばらくすると、ミトの前に緑の肌と巨大な図体を持つ魔物が立ちはだかりました。
「おらは四天王の一体、キングオーガのオガ! この世界で一番の力持ちだ! お前なんかあっという間にぺしゃんこにしてやる!」
 オガはその手に持った棍棒をミトに向けて振り下ろします。
 ミトは慌てましたが、それを片手で受け止めてオガごと放り投げました。
 オガは地面に叩きつけられ、何度もバウンドして転がると、力自慢の自分でも歯が立たないことを悟り、尻尾を巻いて逃げていきました。
 それを見たミトは、つい投げちゃったけどオガさん怪我してないといいな、と心の中でオガを案じました。

 その夜、今まで通り野宿をすることにミトは不安を抱きました。勇者の力を得ているとはいえ、オガのような魔物に眠っている間に襲われたら、きっとひとたまりもありません。
 ミトは、必要なものと割り切って、宝玉を使うことに決めました。三つの宝玉のうち一つを取り出し、願いを込めます。
 【夜の間、私を守ってくれる道具をください】
 すると宝玉は七色に輝き、その形が綺麗な球体に変わりました。願いに沿って、ミトはその使い方を、まるで生まれつき知っていたかのように直感的に理解しました。その球体は、夜の間半球状の結界を張ることができる魔法の道具――結界石だったのです。もちろん、毎日使うことができます。
 ミトは結界の中でぐっすり眠りました。
 残る宝玉は二つ。ミトは魔王城に辿り着き、世界を平和にすることができるのでしょうか?

 ミトが旅を続けていると、フードを目深に被り、杖を携えた骸骨の魔物が現れました。
「私は四天王の一角、ハイリッチのリチ。お前の旅はここで終わりだ」
 リチが杖を振ると、一帯の地面から、無数の死体――アンデッドが次々這い出して来ました。
「力で敵わぬのなら、精神・・を蝕めば良いだけのこと。お前は、これに耐えることができるかな?」
 魔物と人間の永きに渡る戦いの結果として、地中にはたくさんの人間の死体が埋まっています。しかも気候の関係上死体には肉が一部残っており、非常に醜悪な姿になっていました。
 リチはアンデッドを操り、自分を守らせました。所詮は死体でありミトの力の前には脆い存在ですが、それをかき分けてリチを攻撃することは、とてつもない不快感を伴います。まだ十歳の子供であるミトにできるはずもありません。かといってリチを無視して進んでも、リチは追ってきてミトの精神をすり減らすでしょう。
 ミトは苦悩の末、二つ目の宝玉を取り出しました。
 【死体が、怖くない普通の動物に見えるようにしてください】
 宝玉が砕け散ったかと思うと、ミトの視界の中で、リチを囲んでいるアンデッドはごく平凡で特徴のない動物にその見た目を変えていきました。ミトは生命を傷つけることを望みませんが、アンデッドは死んでいるのだと自らに言い聞かせ、勇者の剣を振るいました。たちまち、リチを守るアンデッドを倒します。
「そんな、この手が通用しないとは……!」
 リチは悔しそうにその場を去りました。ミトは、リチの身体を傷つけずに済んだことに胸を撫で下ろしました。
 宝玉はあと一つだけです。

 ミトは歩みを進めます。
(あと少しで魔王城に着くはず……でも、まだ四天王さんは二体いる。魔王さんも。魔王さんとは戦わずに話し合いたいけど、何が起きるか分からないから、最後の宝玉は、できるだけとっておきたいな……)
 そんなミトの前に、今度は、炎をまとった巨大なトカゲがやってきました。
「俺は四天王の一柱、サラマンダーのサラ! 力でも精神でも敵わないのなら、体力・・を奪えば良いんだ! 俺の灼熱を存分に楽しみな!」
 サラが咆哮を上げると、周囲の気温が急速に上がり、大地は干上がっていきました。本能的に危機を感じた動物たちが一斉に逃げ出していきます。サラは、生じた地割れの中の一つに姿を消しました。
 灼熱の中、ミトは速度を落としながらも進み続けます。
(暑い、けど、耐えられる。わたしなら……)
 宝玉の力を使えば、暑さに対処することは可能です。しかしミトは最後の宝玉を温存することを選び、極限の暑さに耐えながら進んで行きました。普通の人間であればとっくに意識を失っていますが、ミトは体に宿っている勇者の力のおかげで、倒れることはありません――そう、今も国にいるたくさんの人々がミトの背を支えているのです。ミトの結界は熱を遮断しますが、それを使えるのは夜の間だけでした。
 ミトは少しずつ、魔王城への距離を詰めていきました。

 二日後の夜、ミトは魔王城のすぐ近くまで来ていました。それを見て、ついに最後にして最強の四天王、エンシェントドラゴンのドラが魔王城から飛び立ちます。
(重要なのは力でも精神でも体力でもなく、相手を奇襲・・することである。サラの熱で弱っている勇者に突然、必殺の一撃、アルティメットドラゴンブレスをお見舞いするのだ!)
 ドラは、夜の闇に紛れてミトの元へと飛んで行きました。

 一方そのころ、ミトは非常に辛い思いを味わっていました。持っていた水は全て飲んでしまい、ミトの口の中はカラカラです。まだサラによる灼熱は続いています。それでもミトは諦めていませんでした。
(あれが魔王さんのお城だ!)
 魔王城を目にしたミトは、懐の最後の宝玉を大切そうに握りしめます。
(大丈夫、まだ宝玉は一つある。魔王さんと仲良くなることもできるはず)
 逸る心を抑えきれず、魔王城へ駆け出そうとするミト――その時、物陰のか細い会話がミトの耳に届きました。
「お兄ちゃん、ぼく、もうこれ食べたくないよ。昨日もそうだったし、明日も明後日も、こんなのを食べないといけないの? ねえ、水は、いつもの動物たちはどこにいっちゃったの?」
「ごめんな、それしかないんだ。家畜も全部逃げちゃったから、本当にこれしかないんだよ。俺だってもっといいものが食べたいし、食べさせてやりたいけど……」
 それは、動物を食べている二匹のゴブリンの兄弟でした。サラの灼熱によって、二匹は飢えて、望まないものを食べざるを得ない状態に追い込まれていたのです。ミトには二匹が食べている動物の名前は分かりませんでしたが、それが全く美味しくないものであることは二匹の表情から明らかでした。
 心優しいミトに、二匹を見過ごすことはできません。
 ミトは二匹に近づき、喉の渇きで掠れた声で話しかけます。
「大丈夫、わたしが何とかしてあげるからね」
 ただ水を湧かせただけでは、暑さですぐに蒸発してしまうでしょう。かといって食べ物を作り出しても、食べ終えるとなくなってしまいます。そこでミトは妙案を思いつきました。
【このゴブリンさんが食べている食材を、世界一美味しい、栄養たっぷりのものにしてください】
 ミトは、二匹が食べていて、明日も明後日も手に入れられると話していた食材そのもの・・・・・・を改善することにしたのです。その食材は、宝玉に込められた力によって、確かに変化しました。
 二匹は恐る恐る食事を再開し、その美味しさに驚愕しました。二匹は涙を浮かべながら無我夢中で食べました。それほどまでに、宝玉による力は強大だったのです。ミトはそんな二匹を見て笑顔を浮かべると、その場を静かに去りました。食べ終えた二匹はミトを探しましたが、すでに魔王城に向かっているミトを見つけることはできませんでした。
 これでミトは、最後の宝玉を使ってしまいました。ミト自身のお腹は膨れていませんし、喉の渇きも癒やされぬままです。それでもミトは、自分の選択をちっとも後悔していませんでした。

 上空からその様子を見ていたドラは、宝玉の力を何となく理解するとミトの優しさに心を打たれ、アルティメットドラゴンブレスを浴びせようとしていた自分を恥じて、魔王城へと引き返しました。



 実はミトも、神官でさえも知らないことでしたが、宝玉の力にはある制限がありました。
 宝玉は、それに込められた、たくさんの人々の互いの幸せを願う想いによって機能します。そのため、宝玉が叶えられる願いは、誰かを幸せにするためのもの・・・・・・・・・・・・・だけだったのです。
 第一の宝玉は、安全な結界の中でミトがぐっすり眠るため。
 第二の宝玉は、ミトがアンデッドを見ても心をすり減らさないようにするため。
 第三の宝玉は、ゴブリンの兄弟がとびきり美味しいものを食べられるようにするため。
 それが、宝玉で魔王を直接倒したり、魔王城に瞬間移動したりすることができない理由でした。ミトはこの制限を知るまでもなく、それを満たしたものを願っていたのです。

 ミトは歩みを進め、ついに魔王城へと辿り着きました。



 時刻は深夜、ミトが魔王城に入ると、玉座の間で魔王がミトを待っていました。傍らには四天王のオガ、リチ、サラ、ドラも控えています。
「勇者よ、よくぞ来た」
 魔王――広い額と巨大な角と漆黒の翼を持ち、その両目を妖しく煌めかせる魔物の王が、ミトに語りかけます。
「魔王さん、夜遅くにごめんなさい。わたしはミト。町の皆には、魔王さんを倒すよう言われたんだけど――わたしはそんなことしたくない。わたしは、魔物さんとわたしたちが仲良く暮らせたら、とっても良いなって思うの」
「ふん、馬鹿馬鹿しい。理想論に価値はない。さっさと消えるがいい」
 魔王はミトの考えを冷たく一蹴すると、ミトを排除すべくその右目――闇の邪眼を起動しました。
 しかしミトはめげません。素早く結界石を取り出し、結界を展開しました。
 直後、闇の邪眼から放たれた闇の奔流がミトを襲います。しかし、結界は無傷でした。夜の間、私を守ってくれる道具――そのミトの願いが、一つ目の宝玉によって叶えられているからです。
 魔王の命を受けてゴブが棍棒で殴りつけても、リチが城に飾られている骸骨を操り襲わせても、サラが炎を浴びせても、ドラが渋々アルティメットドラゴンブレスを撃っても、結界にも中のミトにも傷一つつきませんでした。半球状の結界は地面をも覆っており、地中からの侵入も許しません。
 そして、ミトは半透明の結界越しに説得を再開しました。サラの灼熱の影響で未だ口の中はカラカラですが、それでも懸命に話し続けます。
 魔王はミトの話を聞くうちに、人間と和平を結ぶのも悪くないな――そう思い始めました。ミトの努力が功を奏したのです。

 疲れ切ったミトは、そのまま結界の中で眠り始めてしまいました。結界の中にいるので、毛布をかけてあげることもできません。
 魔王と四天王は自室に戻り、各々ミトの言葉を反芻して、魔物と人間の未来について熟考しました。

 やがて空が白み始めます。人間と魔物の永きに渡る戦いの歴史に残る一日がやってきました。
 魔王と四天王は会議室に集まって今後の方針について相談し、とりあえずミトを客人として歓迎することに決めると、一緒に玉座の間に向かいました。サラは自らの灼熱で苦しめてしまったミトへの謝罪を込めて、水と食べ物を背中に乗せています。
 先頭に立って玉座の間に入った魔王は、そこで予想外の光景を目にしました。

 結界の中で、ミトは、両手両足を切断された無惨な死体となっていたのです。



 魔王は眉を顰め、四天王は皆一様に驚きの表情を浮かべました。魔物として人間と戦ったことがあるため全員人間の死体には見慣れていますが、それでもこの状況はあまりにも不可解です。
 四天王はミトの死を悲しみながらも、次々と疑問を口にしました。
 まず、誰が、何故ミトを殺したのか? 魔王や四天王は少なからず人間を憎んでいますから、ミトに説得される仲間を見て、彼女を殺すことにした者はいるかもしれません。
 しかし、ミトの結界は、誰も内部を攻撃することができない、完全な密室・・・・・だったのです。犯人が誰であるとしても、その中で熟睡していたミトに手出しすることはできなかったはずです。けれど当然、ミトが事故や自殺で手足を切断されたわけはありません。結界の中にあるのはミトとその荷物だけであり、誰かが隠れ潜んでいた可能性もありません。
 四天王は様々な可能性を検討しますが、納得できる答えには一向に辿り着きません。
 魔王はその様子を見て、重々しく口を開きます。
「分かった。我の力を使うとしよう」
 そう言って魔王は、左目の千里の邪眼と右目の闇の邪眼の両方を起動します。
 二つの邪眼の力は合わさり、魔王の額に一つの巨大な目が生じました。
 真実の邪眼・・・・・。それはこの世の全てを見抜く、魔王の究極の秘術です。
 魔王はその力を以て、勇者ミトの死の真相に到達しました。





目次

 読者への挑戦状

 勇者ミトの死の真相を解明せよ。が、何故・・どのようにして・・・・・・・ミトの両手両足を切断し、彼女を死に至らしめたのか?
 全ての手がかりは、すでに克明に記されている。以上は約七千文字であり、それを読み返し仔細に検討するのにかかる労力は、多くのミステリに比べ遥かに少ないことだろう。
 では、健闘を祈る。




 魔王が知った真相――それは、次のようなものでした。

 サラの灼熱により動物が逃げ出した地でゴブリンの兄弟が食べることができたもの――それはリチが操ったような、地中に・・・ある・・人間の死体に・・・・・・残った・・・肉片・・でした。【死体が、怖くない普通の動物に見えるようにしてください】――ミトは二つ目の・・・・宝玉の願い・・・・・の力に・・・よって、・・・・人の死体を・・・・・ただの・・・知らない・・・・動物だと・・・・誤認して・・・・いたのです・・・・・
 結果として、三つ目の宝玉に対する【このゴブリンさんが食べている食材を、世界一美味しい、栄養たっぷりのものにしてください】という願いにより、人肉が、・・・・究極の美食・・・・・へと・・変わった・・・・のです。
 人が常に口にしている、自分の肉体から出ている液体――それは唾液・・です。朝になり目を覚ました人々は、唾液の変化を通じて自分の肉体が究極の美食であることに否応なく気付かされ、すぐに、ゴブリンの兄弟が人肉を無我夢中で貪ったのと同様、自分の・・・肉体を・・・食べ始め・・・・ました・・・。ほぼ全ての人間は、自分の身体を死ぬまで食べ続け、幸福感に包まれながらその一生を終えました。なおミトだけは、サラの灼熱で・・・・・・喉が・・カラカラ・・・・だった・・・ため、・・・自分の・・・身体の・・・変化に・・・気が付き・・・・ません・・・でした・・・
 かくして、人間の・・・文明は・・・滅びを・・・迎えました・・・・・
 ところで神官が説明していた通り、この瞬間も・・・・・この国で・・・・生き・・、互いの幸せを願うたくさんの人々の想いの集積が、盗賊によって深く刻まれた傷を繋げて・・・覆い隠し・・・・、勇者に選ばれたミトの命を保っていました。しかし人々が死に絶えたことにより、その力は失われたのです。
 それによりミトの身体は勇者としての力を得る前に戻り、脱水症状が起きると同時に、その両手両足が外れ失血死にいたりました――そう、ミトの両手両足の切断は、ミトが旅に出る直前、盗賊・・が、嗜虐心を・・・・満たすため・・・・・ミトを・・・騙して・・・誘拐して・・・・行ったことだったのです。

 魔王は四天王たちに、簡潔に真相を説明しました。その途中、夜が完全に明けたため、夜の間ミトを守る結界は消失しました。
 そして魔王と四天王は、ミト――意図せず人間を滅亡させ、自身をも死に至らせてしまった少女の遺体を前に、滂沱の涙を流しました。何故なら、真実の邪眼から分かっていたことではありましたが、誘惑に抗えず食べたミトの身体はこの上なく美味になっていたからです。四天王は切断された両手両足を一本ずつ、城の主たる魔王は頭部と胴体を平らげました。



 こうして、一人の少女によって、人間と魔物の永きに渡る戦いは終わりに導かれたのでした。










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